CMSは、コンテンツ管理システムとしての性格だけでなく、近年ではマーケティングツールとして注目されるようにもなってきました。マーケティングに活用するためには、どんな視点でCMSを選べばいいのか考察してみました。
CMSは、かんたんにコンテンツを作成・公開するためのツールとして使われるケースと、コンテンツを次々にアップしていくことで積極的な発信をするためのビジネスツールとして使われるケースに二極化してきている印象があります。
前者については、CMSに幅広い機能は求めず、自社からの最低限の情報発信を行うことを目的としています。シンプルなシステムを使えば、更新や公開は自社内ででき、コストもあまりかかりません。ECや顧客管理などの必要がなければ、専任のシステム担当者も必要ありません。
後者の場合は、CMSで公開する情報をマーケティングや営業ツールとして活用することを目指しています。たとえば、BtoBの商談であっても、事前にウェブサイトを見て相手企業のことを知っておくことが当たり前になっています。BtoBであれBtoCであれ、ファーストコンタクトとなるウェブサイトは重要だという認識が強くなりつつあるのです。
こういった流れを受けて、CMSの製品トレンドもマーケティングツールとしての性格を強めつつあります。コンテンツ管理機能から顧客体験へと重心が移り、顧客ごとに情報の出し分けができるようなものが当たり前になってきました。
では、マーケティングツールとしてのCMSを考える場合、どんな視点から製品比較を行うべきでしょうか。
CMSには、静的CMSと動的CMSがあります。前者は、あらかじめ生成しておいたHTMLページをユーザーに見せるもの。動的CMSは、アクセスしたユーザーの情報をもとに、アクセスのたびにHTMLを生成し、表示するというものです。
静的CMSは表示速度が速く、またセキュリティの面でも有利です。一方で動的CMSは、顧客ごとにカスタマイズされた情報を表示させることが可能。アクセスごとにページを作り直すので、リアルタイムに情報を提供することも可能。顧客体験を向上させるという点では動的CMSが有利です。
顧客体験を最適化するためには、ウェブサイトだけでのコミュニケーションでは足りません。Eメールやスマホのアプリ、セミナー、実店舗など、あらゆる経路でのコミュニケーションを用いて顧客体験を提供する必要があります。
こういった背景から、マーケティングのためのCMSにはオムニチャネルに対応し、さまざまなツールとの連携ができることが必要とされます。
オムニチャネルへの対応と同じ理由から、さまざまなデバイスへの対応も必要となります。PCはもちろん、タブレット、iOSやAndroidなど幅広いデバイスで閲覧できることがマストとなります。
また、デバイスごとに情報の出し分けができればベター。海外ユーザーへの対応もあるとよいでしょう。
A/Bテストや多変量テストなどは、サイトの効果測定には欠かせないもの。CMSにテスト機能がついていると便利です。またテストのターゲットを設定し、特定の顧客層に絞り込んだテストができれば精密な分析が可能です。
クリエイティブテスト機能を使って、コンテンツの出し分けの効果が予想できたら、実際にターゲティングによってコンテンツの出し分けをします。ターゲティングに使うデータの種類や、ルールの設定の方法などをチェックしておきましょう。
顧客体験を最適化するには、AIを活用する必要もあるでしょう。精度の低いルールよりも、AIによる判断の方が精度が高いことは珍しくありません。マーケティングに相性のよいAIエンジンとの連携ができるか、といった点も注目が必要です。
動的CMSを使うことで、顧客体験をよりリッチに、そして適したものにすることができます。しかし静的CMSに比べると動的CMSはセキュリティの面で弱さがあります。導入したいCMSはセキュリティ対策がしっかりしているかどうかチェックしましょう。
WAF、脆弱性対応、データ暗号化、操作ログの取得とDL、鍵管理(暗号化の鍵管理を行えるかどうか)、
プログラムソースのバージョン管理対応のパッケージ型CMS(2022年3月調査時点)の中から、目的ごとのオススメCMSをご紹介します。
HeartCore CMS
引用元:HeartCore Webコンテンツ管理システム設定ガイド[PDF]
https://www.heartcore.co.jp/file.jsp?id=49551&version=ja
導入コストが安く、
DBから情報を自動更新したい
ECサイト・中規模サイト
分類 | 動的CMS |
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サイト 規模 |
数千~数万ページ程度 |
主な 機能 |
基幹システムとの連携、サイト内検索機能、マルチドメイン、多言語対応(170ヶ国)、SNS連携、ヘッドレス配信機能 |
導入先企業 | 日本航空、三菱UFJモルガン・スタンレー証券など |
Adobe Experience
Manager Sites
引用元:Adobe Experience Manager Sites公式HP
https://business.adobe.com/jp/products/experience-manager/sites/aem-sites.html
豊富なマーケティング機能を駆使して成果改善したい大規模サイト
分類 | 動的CMS |
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サイト 規模 |
数万ページ以上 |
主な 機能 |
コンテンツのパーソナライズ化、Adobe製品と連携、ヘッドレス配信機能、マルチサイト管理、翻訳 |
導入先企業 | mastercard、kaoなど |
NOREN
引用元:WDONLINE
https://book.mynavi.jp/wdonline/detail_summary/id=102645
更新頻度は少なめで、より強度なセキュリティを重視とする中規模サイト
分類 | 静的CMS |
---|---|
サイト 規模 |
数千~数万ページ程度 |
主な 機能 |
多段階承認フロー、多言語対応(日・英・中・韓)、タイマー自動公開、デザインテンプレート、共通部品 |
導入先企業 | 伊藤忠商事、神戸製鋼所など |
※1 動的CMSとは…閲覧者がアクセスするたびにHTMLを生成しユーザーごとに内容を出し分けたり変化させられるCMS
※2 静的CMSとは…閲覧者がアクセスするHTMLページを事前に準備しておくタイプのCMS
【選定条件】
HeartCore CMS…基幹システムとの連携ができ、サイト内検索がデフォルトで組み込まれているパッケージ型CMS
Adobe Experience Manager Sites…Adobe Creative Cloudとのネイティブ連携できる唯一のCMS
NOREN…パスワード変更の際、本人だけにパスワードを通知する機能があり、静的処理を行っているパッケージ型CMS